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二次創作女性向小説置き場 主にマギ(シンジュ)青エク(志摩雪及び雪男受) 18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います
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迷い猫はしんだふり・後編
「迷い猫は死んだふり」後編です 優しいひと×脅迫者
こんな感じのふたりをぼちぼち書いていけたらいいなと思います

拍手[26回]













 その『猫』は、さらさらと降る雨の中、静かにその身体を濡らしていた。
 電柱に寄りかかるようにうずくまって、膝の間に顔を埋めるようにしゃがみこんでいたその青年の横顔がちらりと見えて、どきりとする。
「……っ、」
 雨粒が染みこんでしっとりと艶めいた、長めの黒い前髪。
 そこからぷくりと膨れた水滴が、通った鼻筋をすべり、小さな唇へ吸いこまれていくさまに、つい目を奪われてしまう。
「…人間か?」
 ただ、端整なつくりをした相貌に見惚れただけではない。
 ただ、肌をすべる水滴にいやらしさを感じただけではない。
 奇妙な既視感の正体を探るより前に、己の存在を無視し続ける青ざめたきれいな生き物を抱き上げると、今までの態度など嘘だったかのようにするりと絡みついてきた尻尾に苦笑する。
(なんだ、)
(いじけていただけか)
「…おっと」
 思わず頬を緩めていると急にずしっと重くなった腕の中の質量に驚いて、不意打ちのそれをなんとか落とさないように踏みとどまる。
(やばいな)
 意識を失った青年の身体の重みに焦燥を覚えて、シンドバッドは傘を捨て、帰路を急ぐことを選んだ。
 
 
 
「………」
 湯をはった浴槽に、くったりと力を失った身体をYシャツもジーンズも着せたままの状態で、ゆっくり沈めていく。
 ぐっしょりと濡れた着衣を脱がすかどうか少しためらって、迷っている暇があるならと、シンドバッドはとにかく身体を温めることを優先した。
 背もたれに上体を寄りかからせて、ずるずると身体が下がっていかないよう目を向けながら自分も濡れた身体にシャワーの湯をあて、肌に張りついた衣服を脱ぎ落としていく。
(こいつ、やっぱり…)
 温まった自分の身体をタオルで拭いながら、青年の顔を見れば見るほど強まっていく既視感。
 タイルに膝をつき、吸い寄せられるように近づいて、うつむく頬にそっと手のひらをすべらせれば、さっきより幾分血の気の戻ってきた瞼がぴくりと跳ね、ゆっくり持ちあがった。
「…っ…?」
「! 起きたか、よかった…」
 思わずほっと気が緩んで、自然と笑みがこぼれる。
 俯いた視線がぼんやりと着衣のまま湯に浸かっている身体を見ている気がして、シンドバッドは言い訳のように続けた。
「さすがに脱がせるのはまずいと思ったんだ。自分で脱げるし、洗えるな? 着替えは外に用意しておくから」
 現れた赤みがかった目がぼーっと揺らめいているのを見ているとなんとも言えない気分になって、シンドバッドは青年の返答を待たずさっさと浴室を出た。
(冷えた身体にいいもの…牛乳でも温めるか)
 余計なことを考えないように、冷え切った肌を温めることだけに専念して。
 しかし、キッチンでことことと煮えるミルクパンの中身を難しい顔で凝視していたシンドバッドは、リビングに現れた青年の姿に思わずじっと見入ってしまった。
「…!」
 シンドバッドの用意したスウェットは自分のもので、サイズはもちろん青年にあっていなかった。ゆるゆるの袖口を何回も折って、手足をまくった格好で、青年は髪をごしごしとタオルで拭きながらキッチンに立つシンドバッドにぺたぺたと歩み寄ってきた。
「………、」
 湯気を立てるミルクパンをじっと覗きこんでくる青年にはっとして、シンドバッドは火を止め、マグカップにそれを注いでいく。
「はちみつ、大丈夫か?」
 こくりと頷いた頭にほっとして、シンドバッドはマグカップにとろりと垂らしたはちみつをスプーンでくるくると溶いた。ついでに自分の分のマグカップも用意して、できあがった二つのホットミルクをリビングのローテーブルにことりと置いて、その一連の動きをキッチンに佇んだままずっと目で追っていた青年を手招きする。
 二人がけのソファーに座ったシンドバッドの隣に、まだぼんやりした表情の青年が腰を下ろす。
 目の前のマグカップをそっと両手で支えもって、少しずつカップを傾けてはほう、と息をつく青年を見ていると、シンドバッドの頬は知らず綻んだ。
「……、」
 ミルクをすべて飲み干して、満足気に小さく息を吐いた青年を見て、やっと我に返ったシンドバッドは口を開いた。
「そうだ、名前は?」
(いかんいかん、)
(さっきから変に見入ってしまう)
 静かな部屋に響いた問いは、そのまま壁に吸いこまれていった。
 その代わりのように、青年の身体がゆらりと動いて、隣に座るシンドバッドとの距離を近づけてくる。
「……!」
 ぺたり、膝の上に手が乗って、身を乗り出すようにしたせいで体重がかかる。シンドバッドの瞳を間近でじっと見つめた赤茶の目から視線が離せず、小さく戸惑いの声がもれた。
「……え、」
 跳ねあがった胸を自覚する間もなく、目の前の頭がふっと消える。
「っ!?」
 見張った目で視線を下ろせば、シンドバッドの膝の上に顎をのせ、ソファーの上で丸くなる青年の姿。
「………」
 ふぅ、と洩れたのは、一体何のため息か。
(本当に、猫かもな)
 そんなくだらないことを胸の内でつぶやいて、シンドバッドはまだ少し湿った青年の髪を優しくかきまぜた。
 
 
 可愛らしい面ばかり見せていたその猫が、シンドバッドの『既視感』に確信を持たせるような行動を起こすのに、そう時間はかからなかった。
 それは、夜。
 ダブルサイズのベッドだからと、隣にもぐりこんでくる青年をとくに引き離すこともなく眠りについたシンドバッドの目を覚まさせたのは。
「……ぅ…っ…、」
 腰に灯るねっとりとした熱。
 じわじわと温度をあげていくそれに唸ったものの、なかなか深夜の深い眠りから意識は浮上しなくて、下肢に張りついたその妖しい心地よさに身を任せる。
「――ッ!?」
 しかしその快感が何に直結するのか気づいた瞬間、シンドバッドは急激に襲いかかってきた危機感にはっと目を覚ました。
 どくどくと反応しきっている己の腰へ目を向ければ、くらりと寝起きの頭が揺れるような光景が目に飛びこんでくる。
「…っ…ん、…む、…ふっ…ぁ、」
 ずり下ろされたパジャマのズボン。
 シンドバッドの下着から取り出されたペニスは、青年の小さな唇の中に消えていた。
「ん、…っん…、」
 根元を両手で押さえて、唾液でべっとりと濡れた唇がシンドバッドのペニスをぬるぬると扱いていく。顎が上下して、唇の中に出たり入ったりしていく己のそれは覚醒したときにはもう硬く勃ちあがっていて、その大きさに苦しげに寄った青年の眉に、心臓がざわつくのがわかった。
「ッッ……なんだ、…っ…今度は、発情期か?」
 冗談めかしてゆっくり上体を起こし、下肢に頭を埋めた青年の髪をさらりと撫でたけれど、その声は興奮に少し上擦っていて。
 シンドバッドが起きたことに気づいたせいか、青年は一度舐めまわしていたそこからぷちゅ、と口を離すと、髪に触れたシンドバッドの手のひらに自ら頭を擦りつけるようにして小さくナァ、と鳴いた。
「っ、」
 それにどきりと固まったシンドバッドをよそに、青年はまた口の中で熱く育てていたものに唇を押しあて、ぬるりと飲みこんでいく。ぬっぬっと唇を使って扱きながら、尖らせた舌で裏筋をなぞって、先端を強く吸って。
「ッ……こら、やめなさい…ッう、」
 ぞくっと背を駆ける快感にはっと我に返り、まさぐっていた髪を少し強めにくんっと引く。しかし、その抵抗を気に食わないとばかりに青年は口内に含んだシンドバッドのそれに歯を立てた。
「ッッ――!!」
 ぷつん、と抑えていた糸が切れる。
 その小さな頭を両手でぐっと掴み、問答無用で引き剥がして、そのまま青年の身体をベッドに押さえつけるように体勢を逆転させた。
「っ!?」
 驚きに丸く丸く見開かれた吊り気味の目で見上げられて、大人げない行動をしてしまった恥ずかしさと、仕返しが成功したような喜びが胸を疼かせる。
「だーめって、言っただろ? 俺はお前を抱く気はない…――ああ、なんだ」
 脅すように強い視線で、それでも余裕をもたせるように口端を笑みに曲げて告げれば、途中で青年の身体の変化に気づく。
 青年はスウェットの下半分を既に脱ぎ落としていた。露わになった下肢はすっかり興奮しきっていて、シンドバッドはそういうことかと納得するような気持ちで、熱く昂ぶっていた青年のそこを手のひらできゅっと包みこんだ。
「っあ…!」
 それだけで、強い快感に怯えるようにびくっと腰が引かれる。
「溜まってたんなら、これで我慢して寝ろ。俺には何もしなくていい」
 弱く強く握る力加減を変えて、にちにちと青年のそこを手のひらの内側で擦っていけば、青年の口から切なげな喘ぎがいくつもこぼれていく。
「っぁ、あ…ンンッ…! っふ、ぁ、アッ…、」
 興奮に涙の浮いた目がきゅっと瞑られて、快感に堪えるようにふるふるとかぶりを振るさまを、シンドバッドは確信めいた目で見ていた。
 既視感が、しっかりと形をとって記憶と結びつく。
「…っんン…ッン…」
 シンドバッドの手淫に腰をひくつかせながら、青年はふるえる左手で自らの膝裏を抱え、腰を浮かせた格好で右手の指を自らの小さな蕾にぬるっと埋めこんでいく。既にシンドバッドに奉仕していたときから弄っていたらしく、青年の尻穴はスムーズに彼自身の中指を受け入れていった。
(こいつ、やっぱり)
 追い討ちをかけるように突きつけられたその淫靡な姿態に確信を深めながら、シンドバッドは騒がしい自らの胸の内を無視するように先走りで溢れる青年の蜜口を指の腹で優しくくじった。
「っあ、あ、…ッぅんンー…~~ッッ!!」
 ぶるっと腰がふるえて、膝裏を掴む手にきゅうっと力がこもる。
 シンドバッドの手のひらと自らの腹を濡らした青年は、興奮しきった息を整えていくうちに、すぅっと眠りに落ちてしまったようで。
「……はぁ…」
 手のかかる猫だと思いながらも、シンドバッドは青年の身体を甲斐甲斐しく清めることにした。
 
 
 

 
 
 
『…何逃げてるんです? 気持ちいいんでしょう…? ほら、ここもこんなにパクパクさせて…』
『っひ、やぅん…ッッあ、ひ、っくぅ…はっ、』
 テレビの中で、妖しく身体をうねらせる肢体。
 顔のズームはなく、締まった身体中心に映されていたが、それは確かに『彼』だった。
「………」
「シン、証拠品を私的に使用しないでください」
 眉間に皺を寄せたままその映像をじっと注視するのに没頭していたシンドバッドは、部下であるジャーファルの冷たい視線にはっと振り返った。
「なっ…私的でもないし、使用もしていない! 俺を何だと思っているんだ、まったく……」
 DVDの停止ボタンを押し、ぶつぶつと不満気な口調で否定するものの、シンドバッドはその裏ビデオの証拠品を見ていた理由を現時点で部下に話す気にはなれなかった。
「それ、まだ撮影者がわかっていないグループのものでしょう? 何か、心当たりでもあったんですか?」
「……いや、…」
 そう尋ねられて、思わず答えを濁してしまう。
 人違いという線もまだ残っているし、似ている人物を見かけた、と報告しただけでも、『念の為』と称して根掘り葉掘り聞かれるのはわかっていたからだ。
 まだ早いと思うのは、彼から何も聞き出せていないからか、もう少し落ち着いてからという優しさからか、それとも自分のエゴのためか。
「………はぁ…」
 案の定、特記する理由もなく証拠品とはいえいやらしい映像を見ていた上司に向けれらる軽蔑のまなざしをひしひしと感じながら、シンドバッドは重いため息をついた。
(今日、帰ったら聞いてみるか)
 そう心の中で締めくくって、シンドバッドは『本業』に頭を切り替えることにした。
 
 

 
 
「ただいま」
 家に着くと、返ってくる挨拶はないまでも当然のように出迎えた青年に、シンドバッドは複雑な思いを噛み締めながら彼をソファーに座るよう促した。
 青年の目の前にまずぺろりとつきつけたのは、シンドバッドの身分、及び職業を示す証で。
「!」
「単刀直入に訊く。お前、裏ビデオに出てるだろ」
 ずり、と後退る青年の両手を掴み、逃さないようにぎゅっと握りこんで、真剣な表情を崩さないまま、シンドバッドは続けた。
「もし、お前があそこから逃げ出してきたというなら、あいつらの居場所を教えてくれ。俺が、――いや、俺たちがしょっぴいてやるから」
 青年を安心させたい一心でしっかりと紡いだセリフは、しんとした部屋に吸いこまれていくのにしばらく時間がかかった。
 じっと合わせていた視線が、驚きに丸まって、ややあってから何か考えこむように伏せられ、やっとのことで発せられた言葉は。
「……俺、ジジイどもを訴える気なんてねェよ」
「え、…?」
 青年が初めて言葉を紡いだことと、その内容に、驚いている場合ではなかった。
 聞き返すように呆然と青年を見返したシンドバッドは、彼の口元にイタズラめいた笑みが浮かぶさまをただ見ているしかなかったけれど。
「…でも、あんたは訴えるかもな、ケージさん?」
「………はっ!?」
「――だから、ここで飼えよ。嫌とは言わせねーぜ? 俺のこと、イかせてくれたもんなァ…」
 かわいらしい猫を拾ったと思ったのが、とんでもない間違いだったと気づいたけれど、時は既に遅く。
「…お前……」
「俺、ジュダルってんだ。よろしくなァ…ご主人様?」
 にたにたと笑みを浮かべる青年にやっと悪魔の尻尾が見えてきて、シンドバッドは意識がふっと遠のくのを感じた。
 
 








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