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二次創作女性向小説置き場 主にマギ(シンジュ)青エク(志摩雪及び雪男受) 18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います
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つよがり※シンジュ新刊サンプル
千夜一夜2発行予定の新刊サンプルです。
お試しに読んでほしいところまでと思ったらキリがいいのが半分くらいまでいっちゃってますがそのままUPします。R18です。
年齢に満たない方の閲覧及び購入はお控えください。
学パロでシンドバッド先生×わけありビッチなジュダルちゃんです






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1


 汗の浮いた少年の白い背を皺の刻まれた手のひらがざらりと撫で、細く締まった腰へと落ちていく。
「…ッ、……っは、…」
 少し肌を辿っただけでふるりと反応する身体。
 口元を濡らす唾液で艶めいたように見える唇。
 小さな唇からちらりとのぞく白い歯と、心臓を騒がせるような紅い舌。
 上向いた顎のせいで露わになった喉仏は、思わず噛みつきたくなるような艶めかしい色気を含んでいた。
 視線をねっとりと絡みつかせてその身体を堪能していた男は、情事後の気の緩みと興奮の混じったような感嘆の息を漏らしながら口を開いた。
「…は…、お前は本当に……悪魔の子だな」
 ぴく、とその単語に少年の肩がわずかに反応を見せた。
 ――悪魔の子。
 その単語を耳にするのは、これが初めてではなかった。
 いつしか彼らは、少年をそう呼ぶようになっていたから。
「まあ、親が悪魔だからな…血が繋がっていないとはいえ息子に手をかけるくらいだ、…おっと。いや、これは“噂”だが」
 寝室にしっとりとこもった性的な余韻を引き延ばすように少年の肌に指を這わせながら、少し演技がかった男の声が続く。
 まるで当の本人が目の前にいないかのような、他人事めいた噂話。
「なんでも、息子本人が否定しているそうだからな。…周りから見たら限りなく黒に近いにもかかわらず、だ」
 噂話が進むにつれて、少年の口元がうっすらと笑みに引き上げられていく。
 それはとても控えめだったが、きれいなきれいな弧を描いた。
「…誰かさんのひとことにかかってるってことか。おおこわ、」
 そのきれいな笑みのまま、少年がすっと男の唇を塞ぎ、ぺろりと彼の上唇を舐めた。
 唇が離れる間際に見せた少年の瞳の冷たさに、男の背筋が静かな恐怖でぞくりとおののく。
「っ、……あ、いや、口は慎まなくてはな。…俺はまだ今の地位を捨てたくない。あまり調子に乗ると、ここを追放させられるだけでは済まなそうだ。社会的に破滅させられてはたまったもんじゃない」
 瞳の中に少し怯えを灯した男だったが、今度はまるで少年に媚びるように彼の両手首をとり、そっと捧げもつようにして恭しく手の甲に口づけた。
「…お前の身体は相変わらず堪らない。最高だ。…それにしても、脅迫している側が身体を与え続けるなんて…本当に悪いことを考えたものだよ。これでは誰もお前から逃げられない」
 手の甲に頬をすりつけて陶然と賛辞を告げはじめた男を、少年はすっかり笑みの消え去った表情で見下ろしていた。
 その冴え冴えとした視線に気づかないまま、見当違いの空々しさを思わせるうっとりとした声が続く。
「お前の身体は素晴らしい……脅されていることを忘れるくらいに。そもそもお前に手を出したのが間違いの始まりのはずなのに、いつの間にか俺たちはその間違いにずぶずぶとはまっているんだ。脅されているから仕方ない、逆らえないから仕方ない、そう心の中で言い訳しながら本来なら脅迫者から与えられるはずのない対価を受け取って、お前の“わがまま”を叶える。もしこの関係がたとえ不服だったとしても、お前を抱いている最中に危害を加えたりしたらろくなことにならないと俺たちは知っている。お前は頭がいいから、自分の身に何かあったらすべてをばらまく用意なんて、とっくにしているんだろう」
 頷くかわりに、再び少年の口元だけがそっと笑みに変わる。
 それにやや安堵したかのように、男が少年を見つめ返して言った。
「お前が何をしたいのかさっぱりわからんが、いいだろう。どこまでも、つきあってあげるよ」
 男の言葉に気をよくしたように少年は今度こそにっこりと年相応の無邪気な笑みを顔いっぱいに咲かせて、歓迎するように男の体躯をぎゅっと抱き締め、口を開いた。
「サンキュ、せんせ!」
 それは、屈託のない悪魔の言葉。
 簡素だがしっかりと男の罪を晒して縫い留めるのに十分な一言だった。
 
 
 
 
 
 
 突然首にぐっと体重がかかって、シンドバッドはカエルがつぶれたような声をあげた。
「ぐぇっ」
 こんな乱暴な抱きつき方をする人間は、シンドバッドの勤める学園内でただひとりだ。
「なーシンドバッド、俺と学園せーふくしようぜっ」
 弾む声で、いつものようにその生徒は言った。
 邪気のないように思える、まるで思いつきのような軽さをもったその声にまたか、と思いながら首にまとわりついてくる腕をべりっと引き剥がす。
「…あー…はいはい、また今度な」
 懲りずにするりと腕に絡みついてくる両腕も構わず、ついてくる重みを半ば引きずるようにして校舎を歩く。
 数日前から既に何度か繰り返していた応酬のせいでもう驚くこともなく、何かの挨拶か冗談の類なのだろうとシンドバッドはそれを軽く躱すことにしていた。
 仮に本気なのだとしても、この生徒――ジュダルが“征服”をする必要などないのだから。
 それは、校内では周知の事実だった。
 ジュダルが、ここの学園の理事長の息子だということ。そのせいか、誰にでもわかるほど特別待遇を受けていること。こうして教師であるシンドバッドになれなれしくしても何の咎も受けないのはジュダルだけだった。
 誰も、何も言わない。何も言えない。
 その空気は、この学園に赴任してきたばかりのシンドバッドが察するのにさほど時間を要さないくらいには、既にしっかりと根を張っていた。
 そんなジュダルが、どうして新参者のシンドバッドに懐き、あまつさえ学園を征服しようなどと持ちかけてくるのか、シンドバッドにはまるで心当たりがなかった。
「なァ~聞いてんのかよシンドバッド、俺と組もうぜ、なっ?」
 少し拗ねたような声が後ろからして、くいくいとシャツの裾を引かれる。
 またか、とため息をひとつ吐きだして、今日こそはちゃんと話をしなくてはと振り返れば、ジュダルはわかりやすいくらい嬉しそうに目を煌めかせた。
「おっ」
 あまりにもわかりやすいその表情に、ただでさえ性に合わないからと避けていた説教を今からするのかと思えば気が滅入ったが、いつか話し合わなければいけないのだからとシンドバッドは腹を括ることにした。
「…ちょっと、来なさい」
 職員室で『生活相談室』と書かれた鍵を取って廊下に戻れば、ジュダルは鼻歌でも鳴らしそうな足取りで後をついてきて、シンドバッドはどんどん気が重くなるのを感じた。
 簡単な机とパイプ椅子だけの部屋に入り、椅子に座るよう促せばジュダルは聞き分けよくそこに収まった。いつもこれくらい素直ならいいのだけれど、と内心でため息をつきつつシンドバッドはすっかり重たくなってしまった口を開いた。
「……なあ、ジュダル。わかっているとは思うが、学校はオモチャじゃないんだぞ? それに……俺は何の権限もないただの一教師だ。お前もそうだろう? 俺だってお前が理事長の息子ってことは知ってる。でも、そのことで得た権限は、お前が何か頑張って手にしたものじゃないだろう。そんな権限は大手を振るって使っていいものじゃない。他人の威を借ってふるまうなんて恥ずかしいことだと、お前ならわかっているだろう?」
 ジュダルの成績は決して悪くない。むしろ良いほうだ。ただサボりが多いのと少しイタズラが過ぎるせいで、きちんとコミュニケーションが取れる相手は幼なじみの練姉弟ぐらいのようだったが。
 完全に孤立しているわけではないし、少々性格に難はあるものの起こす事件もお騒がせ程度のものだったので、きちんと話をすれば理解者になってあげられるかもしれない。そう思ってこうして話し合いの場を設けたのだが、シンドバッドが言葉を重ねるうちにどんどんジュダルの顔はうつむいていって、やがてぎゅっと閉じられた唇しか見えなくなってしまった。
「…………、はァ?」
 何かまずいことを言ってしまったかと己の発言を振り返っている間に不機嫌をぐつぐつと煮詰めたような歪(ひず)んだ声がしんとした部屋に静かに響いて、シンドバッドは思考を中断してジュダルの表情を窺った。
「……!」
 こちらを見上げたジュダルの目は恨みがこもったようにきつくシンドバッドを睨み、口は嫌悪に歪(ゆが)んでいて。
「なに言ってんの? 俺が、頑張ってない? …シンドバッドは、俺がただ親の権限振りかざしてるだけだと思ってるわけ? あんな親の?」
「……え? ジュダル?」
 突然矢継ぎ早に言葉を吐きはじめたジュダルとその内容をうまく消化できず、戸惑うシンドバッドにジュダルはまるで恨み言の対象を見ているかの目をしたまま続けた。
「みんな俺には逆らえない。もちろん、親もだ。それでもお前は同じこというの?」
 頑張ってきたんだ、俺は。
 低く絞り出すような声で唸ったと思えばすぐにガタンと椅子から立ち上がり、ジュダルは怒りも露わに教室を飛び出していった。
「……え…」
 ぽつんと取り残されたシンドバッドは、ジュダルの残していった言葉を頭の中でぐるぐると泳がせるばかりで。
(周りがジュダルの勝手を許すのは、その恵まれた環境のおかげだとばかり思っていた)
(でも、それは間違っていた?)
(ジュダルは、“頑張ってきた”と言った)
(“あんな親”、とも)
(もし親に好意をもっていないのだとしたら、確かにその権威を借りているなどと言われたら怒るのも当然だ、でも)
(それなら、ジュダルはどうやって“頑張ってきた”んだ?)
(それも、俺が“頑張っていない”と指摘したらあんなに怒るくらいに)
(理事長の息子、という肩書きがなければ普通の生徒のはずのあいつが、どうやって)
 何よりシンドバッドのまぶたの裏に残っていたのは、ジュダルが立ち上がったときに一瞬見せた、泣きそうにこわばった瞳で。
「……うーん…」
 これは頭を整理してからもう一度話す必要があるな、と一唸りして、シンドバッドはいったん通常業務に戻るため教室を後にした。
 しかし物事は既に動き出していた。
 シンドバッドが頭を整理する時間など、与えさせないくらいの早さで。
 
 
 
 次の日。
「………は?」
「急に現職が辞めることになってしまってね。頼むよ、シン先生」
 朝の職員会議でシンドバッドに告げられたのは、“副理事長就任”の通達で。
『俺と、学園せーふくしよーぜっ』
 羨望と嫉妬、困惑、そして得体の知れないねっとりとした視線が絡みつくなか、シンドバッドはひとつしかない“心当たり”が実力行使に出たのだと思い知ることになったのだった。










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