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二次創作女性向小説置き場 主にマギ(シンジュ)青エク(志摩雪及び雪男受) 18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います
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ほどけない 3
「ほどけない 2」の続きです

誰か黒縁眼鏡ジュダルちゃんください 可視化できる絵心のなさにないた




拍手[7回]


 
 
 
「………ふぅ」
 大学に入ってからかけるようになった黒縁の眼鏡を一度外して、ぼやけた視界を馴染ませるように目を閉じる。
(これで、あいつらの会社にテストアプリは送ったし)
(あとは、自分の分の実験……)
 レンズが大きめのそれをもう一度掛け直して、大学の研究室でコンピュータの画面と睨めっこしていると、不意にパーテーションで区切られた部屋の外が騒がしくなったような気がした。
 その変化もあまり気に留めず、ひたすらキーを叩いていると、誰もいなかったはずの領域に快活な声が響いた。
「ジュダル!」
 その声を聞くのは、どれくらいぶりのことだろう。
「久しぶりだな。昨日帰ってきたばかりなんだ。ほら、これ。土産だ」
「……――ああ」
 名を呼ばれて振り向きはしたものの、押しつけられた紙袋からふわりと香る桃の透きとおった匂いにもろくな反応を返せない。そんな俺をシンドバッドは訝しげに覗きこんだ。
「…? ああ、そうだ。お前、あそこに協力してるんだって? 八芒星。企業のほうから声がかかるなんて、すごいじゃないか」
「………、」
(なんだ)
(知ってるんだ)
(俺が、お前と同じ世界にかかわっていること)
 知らず、口端が歪んだ笑みに上がる。
 どろどろとした感情を滲ませた声が、あふれだす。
「…そうだよ。俺が協力してやれば、あの会社はもっと大きくなる。占有する媒体や端末の比率がいくら流行かなんかで変わっても、俺がすぐに対応できる。俺ならもっともっと、いいものをつくれる。…すごくなったろ? お前の教え子は」
「……あ、ああ…。でも、なんであそこに? お前なら、それこそいくらでも選べるだろう」
「…ッ……」
 純粋に疑問として告げられたその言葉が、どれだけこっちの胸を抉るかなんて、シンドバッドはきっと知らないのだろう。
(なんで?)
(それを、お前が聞くのか)
 鈍くなっていた感覚が、じわじわと息を吹き返していく。
 臓腑が、真っ黒にくすんでいく。
 俺は戸惑ったような表情のままのシンドバッドを睨みつけ、黒くなった肺から嘲笑を吐き出した。
「…はっ、見てろ。俺が、あそこを一番でっかい会社にしてやる」
「ジュダル……」
 はっきりと敵意を突きつければ、、シンドバッドは困ったように眉を下げて、余計に俺を苛立たせる。
(なんだよ、)
(悪いのは、お前だろ)
(お前が、俺を、選ばないから)
 くるりと画面を向き直って命令式の羅列を睨んでいれば、少し後で足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
「………」
 いくら目を凝らしてディスプレイに向かっていても、頭の上を文字がすべっていく。
 ふと鼻腔をくすぐった果実のあまい香りが目を逸らし続けていた感情をつきつけて、膨れあがった衝動のままに拳をがつんと机に叩きつけていた。
「……ッッ、」
(どうして、)
(いらないなら、放っておいてくれよ)
(なんで、こんな)
(これも、罰なのかよ)
 ごちゃごちゃと混線していくのは、たったひとりの男に向けるものばかり。
 それがわかっているからこそ黒い糸はより黒く煤けて、こんがらがって、いつまで経っても逃れられなくて。
(見てろ)
(俺に声かけなかったこと、後悔させてやる)
 すべての感情をすり替えて、俺はシンドバッドの対極に立つべくキーを叩いた。
 
 







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