二次創作女性向小説置き場
主にマギ(シンジュ)青エク(志摩雪及び雪男受)
18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います
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2024.05.07 Tuesday
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ほどけない 4
2012.05.06 Sunday
「やぁ、ジュダル。はかどってるか?」
「………」
解せない。
帰国してから、なぜかシンドバッドは俺の元を訪れるようになった。
(今まで、ろくに連絡もよこさなかったくせに)
憮然とした表情でコンピュータに向かう俺の心中など察する気もないような溌剌とした雰囲気を纏ったシンドバッドは、ひょいとディスプレイを覗きこんでくる。
「……そんなに仕事と研究ばっかりでどうするんだお前…たまには息抜きしろよ」
こなしている仕事の量を把握したのか、シンドバッドは呆れたように息を吐くと俺がかけていた眼鏡をすっと取り上げた。
「あっ…! てめ、何す…」
じわりとぼやけた視界にぐっと眉を寄せて、眼鏡を取り返そうと椅子ごとぐるりと振り返れば、思いのほか間近にあった視線に驚く。
「俺が、遊んでやろうか?」
ピントを外しようもないくらいの至近距離で、少し意地の悪い笑みを浮かべたシンドバッドの目がじっと見つめてくる。
「!! ッッ誰が…!」
カッと頭が熱くなって、近すぎる距離を拒むようにシンドバッドの胸板を押しやろうとした両手首は逆に掴まれ、ぎゅっと抵抗を抑えこむように握りこまれて、唇を噛みつくように吸われた。
「ッッ!!」
何度も唇が唇で食べるように挟まれて、呼吸のために口を開けた隙にぬるりと舌が差しこまれ、口腔を撫でてはまた唇が啄まれる。
「ンーッ! ぅ、ん、ンン…~~っっ!」
いきなりの事態に背筋をぴんとこわばらせたまま、突き飛ばそうとしても両手はしっかりと握りこまれた状態で、それでも抵抗しようと身体を捻っていたけれど、啄んでは離れ、口の中を探っていくキスから逃れることはできなくて。
(なん、)
(なんで、こんな)
(やだ)
「ん、んんー…ッ! っふ、んむ、ッ…~~!!」
キスはどんどん深くなって、潜りこんできた舌が引っこんでいた舌に絡みついて、じゅっと唾液ごと吸いあげてくる。ぞくぞくっと首の後ろに走った初めての感覚が少しこわくて、でもそんなこと目の前の男には知られたくなくて。
「ンンッ…! ん、ん…っ…は、…っ!!」
ぞくぞくと身体の内側を撫でるようなその感覚はキスが長くなるほどに強くなって、ざらりと歯の裏を舌で擦られるとぶるっと腰がふるえて、カッと熱くなった。シンドバッドに気づかれるのではないかと思うほどのそのふるえが恥ずかしくて、目元がじわじわと熱を帯びていく。
「っふ、…ぅんン…ぅあ…ッ!?」
やっと唇は解放されたけれど、口の中がじんじんと熱く痺れたようになっていて、ただ口を薄く開いて酸素を取りこむことで精一杯だったのに、俺が座っていた椅子にぎし、と体重をかけて、シンドバッドが俺の足の間を膝で擦ってくる。耳元でかすかにふっと笑った声がして、少し反応していたそこを見抜かれたのかと思えば、頭が沸騰しそうになって死にたくなった。
「~~~ッッ!!」
「…なんだ、キスだけで十分反応してるじゃないか。ジーンズごしでもちゃんとわかるぞ? ほら、硬くなってる」
「~~ッッてめ、やめろ、やだ、っうあ、ッく…~~っっ!!」
のしかかってきた身体を引き剥がすために暴れようとすればするほど、ゆさゆさと股間に押しつけられた膝がそこを容赦なく刺激してきて、罵ろうと口を開いても途中で上擦った情けない声に変えられて自滅する。それでも羞恥に打ちのめされている暇なんてなくて、どんどん熱を帯びていく下肢に危機感ばかりが募っていく。
「……ッッ、ぅく、…っ…、」
少しでも襲いくる刺激に耐えようとぎゅっと歯を食いしばっていると、唇の狭間をなぞるようにぬるりとシンドバッドの舌が撫でてくる。
「…もっと力を抜け、ジュダル。そっちのほうが、ずっと気持ちいいぞ?」
「……!」
誰が力を抜くかと思っているのに、散々弄ばれた口の中はまだわずかに熱く痺れていて、ぐっとなかば強引に舌を差しこまれれば簡単に侵入を許してしまう。
「んぅっ…ふ、ん、ンン…ッ!」
ぐずぐずに融けた内側をぞろりと舐めて、擦って、弱く歯を立てられて、顎にこめる力が奪われた状態で膝がぐりっと足の間を嬲ってきて、じわりと先走りが下着を濡らす感触に瞼の裏が真っ赤に染まる。
「ッッ! ッン、も、やらぁ…っや、んんッ…ン…~~ッッ!!」
キスの合間に腫れぼったくなった舌を動かして必死に訴えれば、口を開いたことを後悔するような舌ったらずな音になってじわりと涙が浮く。それが合図になったかのようにジーンズのボタンが外されて、ボクサーパンツごと揉みこむように大きな手のひらがまさぐってきて、口の中に差しこまれた舌のせいでろくに身体に力をこめることもできなくて、与えられる快感を丸ごと受けとってしまう。絶頂寸前でやっと唇の結合が離れて、いつのまにか両手は自由で、縋るようにシンドバッドの肩を掴んでいたけれど、下着を少しずりおろして蜜の滲む先端をぱくりと咥えられて、思わず口を両手で覆うしかなくて。
「――――ッッ!!」
じゅうっと先走りの液を啜りとるように吸われて、大きな声をあげてしまいそうになり必死に中指に歯を立てる。追い討ちのように何度か唇で扱かれてしまえば我慢の限界で、目の前が一瞬遠くなって、どくりとひときわ大きく心臓が鳴る。背筋をぶるっと突き抜けた快感を味わう間もなく、引き戻された現実にさっと血の気が引いた。
「…ッッ…は、……っ…、」
おそるおそる下肢に頭を埋めた男のほうを見れば、視線に気づいたのかシンドバッドはこちらを見つめ返しながらあからさまにゴクリと喉を動かした。ぺろりと己の上唇を舐めてにっと口端を笑みに引き上げた男の底意地の悪さに、過ぎる羞恥のせいでおざなりになっていた怒りが一気に戻ってくる。
「――ッッざけんなテメー!! っだ、誰がこんなっ…ンなことしろって頼んだよ…!! ざけんな、出てけ、このっ…!」
机の上にあったペンや資料をガッと荒々しく掴んで手当り次第投げつけると、シンドバッドはそれを避けるように少しずつ後ずさっていく。
「っちょ、いて…っ…なんだ、気持ちよかっただろう? なんでそんなに怒って…、」
さも不思議そうに問いかけながら飛んでくる物体を避けるシンドバッドに殺意すら沸いて手にとったそれを投げつければ、耳の横すれすれを通過していったハサミに一瞬男の声が途切れる。しんと静まった部屋にはぴりぴりとした怒りが満ちていて、さすがのシンドバッドも軽口を叩かなくなった。でも、しばらく続いた沈黙を破ったのはどちらの声でもなく、携帯の着信音で。
「…っと、悪い」
我に返ったようにシンドバッドは尻ポケットから携帯電話を取り出すと、二言三言短く会話しただけで通話を切った。
「すまんな、ちょっと急用だ。…また来る」
「っは!?」
そう言うと俺の頭をぽんぽんと軽く叩いて早足で出て行ってしまったシンドバッドに、俺はその背に向けてもう一度筆立てごと投げつけた。
「――ッッこの…!」
閉まったドアにぶつかり、騒々しい音を立ててばらばらと散らばった文房具に視線を落とす。
「………っ…」
誰もいなくなったのだと思えば、怒りよりもぐっと胸を締めつけるような苦しさが増して、襲いかかってきた。
「…ッ……ふざけんな…」
(遊びって、なんだよ)
(これが?)
(ふざけんな、俺は)
勝手に帰ってきて、勝手に踏みこんできて、それだけで何を考えているのか全然わからなかったのに、こんなところまで簡単に荒らされて。
一人になれば今まで味わったことのなかった感覚に翻弄される恐怖がぶり返して、本当なら望んでいたはずの男の手のひらや唇の感触を思えば、こんな状況でも浅ましくそれを欲する自分が少しでも存在するのが腹立たしくて、悔しくて、――苦しくて。
(遊びなんて、誰が)
「……ッ…、」
じわっと眦を濡らした液体をぐいと手のひらで乱暴に拭って、手荒に身支度を整えると、机の隅に置かれた眼鏡を見つけて掛け直す。
視界がくっきりとすれば意識もまた切り替わったような気がして、俺はさっきまでのことをすべて頭の外へ外へと遠ざけるように、代わりに別の言語でいっぱいにして、コンピュータの画面に向き直った。
→sampleここまで
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