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二次創作女性向小説置き場 主にマギ(シンジュ)青エク(志摩雪及び雪男受) 18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います
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ただ、ひとつだけを 3
「ただ、ひとつだけを 2」続きです  しまくんがさらに最低なことに




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「…………」
 あれは、夢だったんだろうか。
 毒が抜けるころには現実感だけが曖昧に抜き取られてしまったようで、雪男はそんな疑問すら浮かべるようになっていた。
 しかし冷静に事態を把握しようとする心を掻き乱すように、耳の中にあまい低音がこだまする。
『へえ、そんな顔もしはるんですね』
 下肢に絡みつくねっとりとした舌の感触。
 肌をまさぐる骨ばった指のあたたかさ。
「…ッ!」
 現実にぞくっと背を走ったふるえに、雪男は少し経ってから部屋に戻ってきた教授に尋ねていた。
「先生」
「ん?」
「あの毒に幻覚作用なんて、なかったですよね?」
「うん。何か見たの?」
「…いえ。おそらく、夢でも見たのかと」
「夢、ねえ……あの毒は意識や感覚ははっきりしてるってのが特徴だからそういう曖昧な現象は起きないはずなんだけどなあ…雪男くん、また寝てないんじゃないの?」
 雪男の言葉に首を捻っていた教授の目が、じっと静かに責めるようなものに変わったのに気づいて、雪男は笑ってごまかした。
「はは、そんなことないですよ。あ、そろそろ授業の準備しなきゃいけない時間ですね。先生、ありがとうございました」
 その視線から逃げるように教授室を後にして、雪男は詰めていた息を小さく吐き出した。
「……ふ…、」
(もし、夢だとしても、なんであんな夢)
(なんで、志摩くんが)
(もしあれが本当に僕の夢なら、相手は志摩くんじゃなくて)
 そこまで考えて、雪男はハッと次に繋がる思考を遮断した。
「…っ、」
(考えない、考えない)
 それでも廊下を映しているはずの視界の裏にちらつくのは、むりやり心の奥に押しこめた『本当の願望』で。
(違う、違う)
(こんなこと、あっちゃいけない)
 意味をなさない言葉ばかりを呪文のように胸の内で繰り返して、雪男はさっさと気分を切り替えるためにと講師室へ向かった。
 しかし、雪男が『夢であれば幾分かマシ』だと思っていたその出来事は、残念ながらほどなく現実として認識せざるを得なくなった。
 それは、『二度目』が起きたから。
 しかもまた妙な効力の毒のときに、彼は現れたのだった。
 
 
 
 教授の人差し指が雪男の口端から口内に差し込まれ、ぐるりと頬の内側をなぞる。
「…ッ…、」
「うん、唾液の分泌も結構少なくなってきたし…この毒も、もうオーケーかな」
 まだこの訓練を始めたばかりの頃に雪男を戸惑わせた毒は、何度か回を増すうちに戦闘が可能なまでに耐性をつけることができるようになっていた。
 肌を鋭敏にさせ、粘膜の潤滑を促すこの毒に何度悩まされたことかと苦々しい表情を浮かべた雪男だったが、教授の指が口腔から抜け出ていくときにするりと舌を撫でて、そこから伝わるぴりっとした刺激に、思わず教授をこわばった目で凝視する。
「ッ! 先生……まさか」
 何か別の毒を塗りつけたのかと視線で問えば、なんてことないように教授は頷いた。
「うん、それ、新しいやつね。新しいやつっていうか、君が今日耐性つけたやつの高レベル版」
「……まだ…上があるんですか…」
 あらためて道のりの遠さを思い知らされたことと、これから身体に回る毒の効果を思ってくらりと意識が遠のきそうになる。少しうんざりしたように呟けば、教授は対照的に明るい声で返してくる。
「うん。でも、これが耐えられるようになれば上出来なんじゃないかな。これ以上の濃度はもう、そう簡単に出回るようなものじゃないから」
 そう言われても、今まで何度も同じような症状に苦しめられてきた身とすれば素直に喜ぶのも難しくて、それでもなんとか自分に言い聞かせる。
(仕方ない)
(これさえ終われば、この類の毒に関してはもう終わりだ)
(あと、もう少しなんだから)
 そう考えているうちにぐにゃっと視界が融けたように歪んで、観念したように目を閉じた。
「ッ……――っ!!」
 ひとつ息を吸いこんだ次の瞬間、急激に体温が跳ね上がる。既に幾度も苛まれたことのある熱が腹の奥から沸きおこって、それが腰にねっとりと絡みついて、探るように肌を撫でてくる。
「ッッ……、…っふ……」
(確かに、これはきついな)
 それでも身体の反応を覚えようと冷静に感覚の上昇を把握する自分がちゃんといたけれど、そちらに集中するのがやっとで周囲のことにまで気を配ることはできない。
 しかし、そんな余裕のない雪男の意識を、教授は一気に引き戻した。
 それは、ひとつの着信音とともに。
「ん? 呼び出しだ。なんだろ」
 音の鳴った端末に目を通しながら外出の用意を整えていく教授を、雪男はじわじわと増していく危機感とともに霞む視界に映していた。
「じゃあ、これ置いてってあげるから。我慢できなくなったら使ってね」
 ソファーに横になったままの雪男の目の前のローテーブルにどんと置かれたものに、雪男は目を疑った。
「!? …ッッ冗談、」
 すでに毒の効果でじわじわと口内にあふれ続ける唾液に舌の重さを感じながら、なんとか今にも縺れそうな声が出る。
『使え』と示されたのは、ビー玉より少し大きいくらいのパールがいくつも連なった形の性具で。
「ッッ…げ、解毒剤は」
 冗談じゃないと今にも出ていってしまいそうな教授を睨みつけた雪男だったが、教授はこちらと目を合わせるとけろりと言ってのけた。
「解毒剤? ないよ」
「は、」
「これは断続的に投与しないと効果が持続しないタイプだから。強い分、すぐ抜けるよ。といっても30分くらいはかかると思うけど」
 じゃ、あとでね、と言ってこちらの焦燥などまったく気にした様子もなく、教授は部屋を出ていってしまった。
「…っは……」
(冗談じゃない)
 ちらりと視界の端に映った黒いシリコン製の玩具を、雪男は目の敵のように据わった目で睨んだ。
(こんなもの、使ってたまるか)
 そう思っているのに、なぜかそれから目が離せない。
(指は入れられたことあるから、あれなら入るかもしれないけど)
 それを使ってどうこの熱を鎮めようかという思考が、止まらない。
「ッッ…」
(考えない、考えない)
 はっと我に返って目を瞑り、思考を惑わすそれから視界を遮断する。
 いくら神経が鋭敏になっていたとしても、誰かに触れられたり刺激されたりしなければ、耐えられるはずだ。
 そう考えても、『耐えられる』という部分より、『誰かに触れられたり、刺激されたり』のほうに意識がいって、口腔がなぞられた感触を思い出してぞくっと身体にふるえが走る。
「…ッ…!」
(だめだ、だめだ)
 それだけで、下肢に熱が集まっていくのがわかる。
 そして、そちらに意識を向けてしまえば先日そこを口に含まれたときの舌の感触が蘇って、ひくっと腰が浮きあがった。
「ッッ…ぅ…~~っ!!」
 そこに顔を埋めていたピンクの頭の残像が、ジジッとノイズが走ったようによく見知った黒髪になりかけて、雪男は目を閉じたままぶるぶるっとかぶりを振った。
(違う、違う)
(あれは、志摩くん)
(そう、志摩くんだから)
(『他』は考えちゃだめだ)
 しかし、そうしていざ廉造のことを認めてしまえば、身体を取り巻く愛撫の記憶はより濃く、刺激の強いものになって。
 全身を、手のひらがねっとりと滑る。
 勃ちあがりかけたペニスを舌が掬うように口内に迎え入れて、口の裏側のやわらかい箇所でぎゅっと締めあげて、じゅうと先走りを啜るように吸って。
「ッッ…ぅ、…は、っく…!」
 自分を制止する声が、どんどん遠くなっていく。
 どろどろに融けかけていた雪男の意識を不意に引き戻したのは、頬をぴたぴたと叩いた冷たくやわらかいものの感触だった。
「――ッッ!?」
 はっと目を開いた先には、やや苦笑いの廉造の顔が広がって。
「なんや、けったいなときにばっかり会いますなあ」
「!!!」
 ソファーの傍らにしゃがみこみ、こちらを覗きこんでいる廉造が雪男の頬にぐりぐりと突きつけているのは、まごうことなく教授が置いていった玩具で。
「~~ッッ、な、なん、で」
 ぱくぱくと口を開閉させてろくな言葉の出てこない雪男に視線を合わせながら、廉造は口の片端を引き上げた嫌な笑みを浮かべた。
「これでナニするつもりだったんですか? 若センセ」
「ッッ…そ、んな…しらな…っは…!?」
 その腹立たしい笑みにやっと仏頂面をつくる余裕ができて、知らぬ存ぜぬを貫き通そうと思ったのにYシャツの上から廉造の手のひらが胸板をざわりと撫でて、びくっと身体が硬直する。ぞわぞわっと全身に広がったのは疼きに似た快感で、肌がその刺激を欲しがるように上肢がうねった。だめだと思って身体に力をこめて硬くこわばらせても、伝わる刺激の強さは変わらなくて、雪男の困惑は深まっていく。
「ッッぅ…!」
「なんや、身体発情しきっとるやないですか…やっらしいの」
 手伝ってあげますわ、と耳朶を唇で挟みながら囁かれて、喋られるたびにぞくぞくと耳の後ろから背筋を走るこそばゆいような快感に、小さな喘ぎがあふれて止まらなくなってしまう。
「ッ!! ぁ、…っぁ…ッッやだ、やめっ…いらな、…っしまく…っうぅん…!」
 やっとのことで大きく声を押し出しても、その声を無視するようにかちゃかちゃとベルトの金属音が小さく雪男の耳に届いてくる。ぐったりと力の入らなくなった重い腰が抱えあげられて、スラックスが下着ごと足から抜かれていく。脱がすときに腰から太腿を掠める指の感触すら肌は拾いあげてくるものだから、抵抗する声も途中で上擦って途切れてしまう。それが自分の耳に届いて羞恥に歯噛みする暇もなく、膝が掴まれて胸につくように折り曲げられ、片方はソファーの背もたれに引っ掛けられて、すべてを露わにさせられる。腰の下に廉造の膝が差し込まれたせいで尻の奥までが曝されて、熱に潤んだそこに男の中指が呑みこまされていく。
「ッッ~~や、んん…!!」
 きゅうぅっと腰に熱が集まって、ひくっと勃ちあがったままのペニスが反応する。指の感触までありありと感じ取ろうとする内壁に、ぎゅっと閉じた瞼の裏が赤く染まった。指の腹で中の凹凸を擦るように抽挿がはじまって、抵抗するようにこわばらせていた身体の内側がどろっと融けていく。
「ひ、っあ、ぁ…ぅ、ん、ンンッ…~~っ!」
 たくしあげられたYシャツから、うねる白い腹が覗く。第一ボタンまできっちり締めたままの上肢と、すべてを暴かれた下肢の落差がいっそう雪男の卑猥さを際立たせて、廉造はこみあげてくるものをごくりと飲みこみながら指を引き抜き、二本に増やして埋めこんだ。
「ッッふ、ん、ン~~…っは、っっ~~!! ぁ、あ…~~っあ…ぁ、」
 ずず、とゆっくりゆっくり奥まで押しこみ、前立腺を掠めるあたりでぐっと強く突きこむ。それだけできゅうっと指が締めつけられて、雪男の腹を白濁がぱたぱたと濡らした。
「っっ…は、…は…ぁ…ンッ…!」
 ぼんやりとどこか虚ろに視線をやる雪男の体内から、ずるりと指が抜け出ていく。しかし絶頂を迎えた直後の弛緩した下肢にあてがわれたのは、先ほど雪男を覚醒させた冷たい感触で。
「!! ッッや、やだ、しまく、それや…っひ、う、ぅっ…~~~!!」
 入り口で試すように何度かつぷつぷと抜き差しされて、思わず声が上擦る。それだけではそれほど強い刺激にならないため、少し理性を引き戻された状態で玩具の感触をまざまざと味わわされて、恐怖と羞恥がないまぜになって襲いかかってきた。抜き差しを繰り返しながら、ゆっくりゆっくり奥まで入りこんでくるその得体のしれない物体が怖くて、そのくせ球体が内壁を擦るたびに生まれる熱がじわじわと腰に送りこまれていって、身体の興奮が止まらない。
「っは、…ぁ、アッ…! ッッぅ…こ、の…!」
 雪男の制止も懇願もすべて無視して勝手に身体を扱い続ける廉造が憎らしくてギッと睨みつければ、目を合わせたのが間違いだったと後悔するような、背筋がぞくりとするような雄の目が見下ろしていて。
「どこまで入ったか、見ます?」
 ぺろりと己の上唇を舐めた廉造の口から、いやらしく低めた声が放たれる。雪男の返答を待つことなく膝を掴んだ手がじりじりと雪男の身体をソファーの肘掛けまで押しやって、上体がずり上がるように起こされた。背を丸めるような格好になり、ふと俯いた廉造の視線を追うように下に目を向ければ、折り曲げられた足の間から伸びている黒い玩具が見えて。
「ッッ!!!」
「ん~、まだ…ひい、ふう、みい…みっつ丸いの残ってるん、わかります?」
 また腰の下に膝が突っこまれて、より尻が雪男に見えるように腰を浮かされる。その体勢のせいで廉造が何を数えているのかわかって、全身が羞恥で熱くなるのがわかった。
「ッ!!」
 ふざけるな、そう言おうと口を開いたのに、次の瞬間一気に三つ分ぐちゅんと奥まで捻じこまれて、頭が真っ白になりすべてを解き放ってしまいたくなる。
「ッあ、っく、~~~ッッ!!」
(やだ、やだ、やだ)
 それでも理不尽な怒りと、この男の前では気を緩めたくないという負けず嫌いの根性から必死で身体に力をこめ、びくびくとのたうつ腰も腹の奥から直接伝わる熱も抑えつけて、歯を食いしばって絶頂を迎えることだけは阻止することができた。
 しかし、大きな波を乗り越えたその後に雪男がこぼした、小さな安堵の吐息を見計らったかのように、パチンと玩具のスイッチが入れられて。
 ブルブルッと強くふるえはじめた玩具に、油断していた体内は鋭いくらいの刺激を感じとった。
「ッッひ、やあぁ…っあ、あぁ…っあ、ア――ッッ!!」
 さらに追い討ちをかけるようにふるえたままのそれをぐりっと弱い部分に押しつけられて、びくびくっと腰を大きくのたうたせて二度目の絶頂を迎えた肢体は抱えこむように伸びてきた廉造の腕の中にぐったりと沈み、意識の糸はそこでふつっと途切れた。
 
 



 
「ッッ…!」
 得体のしれない危機感に襲われてはっと身体を起こした雪男は、静まりかえった教授室をぐるりと見回してもなお、現実感をうまく取り戻せずにいた。
 ソファーから飛び起きて自分の服装を確かめるが、ここに来たときと同じYシャツとスラックスをぴしりと身につけていて。
「…っう…、」
 ただ、急に動いたことによって腰の奥が怠さを伝えてきて、夢だったのかと簡単に胸を撫で下ろすことができなくなった。
(…いや、違う違う)
(これは、毒のせいできっと、勃ってたからで)
 おそるおそる隣のローテーブルを見やれば、教授が置いていった場所に玩具はそのまま置いてあって。
(ほら、やっぱり夢だったんだ)
(……でも、どうして?)
(なんで今回もまた、志摩くんなんだろう)
(…いや、これでいいんだ)
(『彼』じゃないなら、そっちのほうが、まだ健全だ)
 自嘲気味に唇を歪めた雪男を今度こそしっかりと現実に引き戻したのは、携帯電話の着信音で。
 メールの受信を知らせたそれを手に取ると、差出人を目にした雪男の顔が少し引きつった。
 夢のはずの感触が、そろりと肌を撫でたような錯覚に捕らわれる。
「っ…!」
 どくどくと心臓が嫌な音を立てはじめる。
 件名は、なし。
 本文は――。
「ッッ――!!」
 腹に飛び散った白濁。
 折り曲げられた足の間には、深く飲みこまされた黒い玩具。
 ぐったりと目を瞑っているのは、間違いなく雪男のもので。
 必死に玩具を引き抜こうと伸ばした手は、まるで自ら玩具を欲しがっているようにも映って。
『あんまりエロかったんで、お裾分けしときます』とだけ書いてある本文を睨みつければ、ぐつぐつと腹が怒りで煮え立ってくるのがわかる。
(あいつ…!)
 夢ではなかったのはよくわかったけれど、突きつけられた現実はこの上なく最低最悪な代物で。
 不利に思える現状をどうにかするためにも、怒りを発散させ冷静な思考を連れてくることが先決だと判断して、雪男はトレーニングルームに足を向けることにした。







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