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二次創作女性向小説置き場 主にマギ(シンジュ)青エク(志摩雪及び雪男受) 18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います
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mismatch?
文化祭で女装志摩雪なただのえろ話
※トイレでomrsプレイ有です変態注意!苦手な方は回れ右お願いします
(「青焔の宴」無料配布本でした)



拍手[23回]






「……………」
 くらりと頭が重くなってうつむけば、視線の先には剥き出しの自分の足。太ももに食いこんでいるのは、普段女子生徒が身に着けている長いソックス。
 足の根元を覆うひらひらした布がちらちらと視界に入りこんできて、現実を突きつけてくる。
 恐る恐る洗面所の鏡を見上げれば、映りこんだのは女子の制服を身に着けた自分の姿。
「………」
 ――気を失ってしまいたい。
 どうしてこんなことになってしまったのか、雪男は顔面から血の気が引いていくのを感じながらしにそうな吐息を細く漏らした。
 





 
 今日は、正十字学園の文化祭だった。
 雪男の属する特進科の出し物は、優等生の集う者たちが提案する内容とは思えないもの――女装喫茶で。
 なぜそんな自体が起こるのかと言えば、この学園の文化祭における特殊な決まりが大きく関わっていた。
 正十字学園の文化祭は、クラス単位で催されるものではない。
 特進科と普通科、各一クラスが合同でひとつの名目を出し物とする慣習になっていた。
 だから、こういう事態はよくあるのだ。
 文化祭と聞いてはりきる普通科と、それより勉学が大切だから進行は普通科に任せる、と無関心な特進科。
 のちのち後悔するのは特進科のクラスで、大抵は一年生のときにこの『文化祭の洗礼』を受けて次の年からは特進科も進行に携わることになるのだが。
 今年はまさに、雪男の属するクラスと、志摩の属する普通科のクラスがそれだった。
 雪男は一応文化祭の出し物に関して、話し合いに参加はしていた。出し物の内容が決まったときも呆れを感じながら、絶対に自分は女装役に回らないようにと話し合いの進行役や当日の半券の管理などの経理面を買って出ていた。
 しかし、当日になってよからぬ事態が起きてしまった。
 特進科の女装役を任されていた男子が、ことごとく姿を現さないのだ。
(…やってくれたな……)
 こういうときに優等生はサボりという行為に走るのか、と雪男は痛む頭を押さえながら苦い笑みを浮かべていた。
 嫌になるくらい、逃げだした彼らの気持ちがよくわかる。
 この穴を誰が埋めるのか、これからどういう事態になるのか、最悪の可能性は容易に想像ができて、その目まぐるしく回転する頭の中でふっと過ぎったのは、ピンク色のやわらかそうな髪の毛で。
「…っ、」
 彼に見つかる前に、と思えばごちゃごちゃと考えていた何もかもを放り出して、雪男もまた逃げ道へ駆けだしていた。
 
 



 
 それは、ほんの数分前の話。
「あっ! 学園長~! ひどいんですようちの合同クラスの男子ったら! 全然協力してくれないんです!」
「おやおや、それは困りましたねェ……では私が少しだけ、お手伝いをしてさしあげましょうか」
「ホントですかぁ!? ありがとうございます、学園長!」
「いえいえ。文化祭を楽しむのも、生徒の義務ですよ☆ さて、私が今から何人か、困った男子生徒に女子の制服を着せておいてあげます。逃げ出したお馬鹿さん限定で着せておきますから、貴女方は探してあげてくださいね☆」
 逃げ出した、と聞いて彼女たちの誰もが思い浮かべたのは、いつもなら円滑に話を進めてくれていた優しい笑顔の学年トップの姿。
「――ッッはい!!!」
 もしかしたら、イレギュラーな彼の姿が見られるかもしれない。
 芽生えた淡い期待を暴走させた女子生徒たちは、ただちに隠れた女装男子を探すため思い思いにフェレス卿の元から刺客よろしく駆け去っていったのだった。
 
 
 
 





 
***
 




 
 
 

「…………」
 逃げこんでいたのがトイレでよかった。
 何が起こったのかとりあえず鏡を見て把握しなければと、自分以外誰もいないことを確認してから個室から出て洗面器の前に立てば、突きつけられた理解しがたい現実に呆然と立ち尽くすことになる。
 着ていたはずの男子用の制服はどこにも見当たらない。というか、一瞬で変わってしまった女子の制服は、脱ごうと思っても目に見えない力で身体にぴったりはりついて脱げそうになかった。
「………」
 おそるおそるごそごそとスカートの下に手を這わせて確認すれば、下着だけは元のボクサーパンツのままで、こちらは脱ぐことができそうだった。
 ご丁寧にかけられた魔法の質を考えれば、かける人物など一人しか思い当たらない。
(…フェレス卿……)
 そもそも雪男に合うサイズの女性の服が存在することがおかしいのだ。それを考えれば何も逃げなくてもよかったのだが、やる気満々の普通科クラスの面々――特に志摩のことを考えると何をされるかわからなくて、つい逃げてきてしまった。
 顔を手で覆ってしばらく俯いていたが、いつまでもこうして自分の哀れな姿に打ちひしがれているわけにもいかない。肺の底から憂鬱を押し出すように深く長い息を吐いて顔を上げた瞬間、ぽんと肩が叩かれて雪男の身体は情けないくらい大きく跳ねた。
「ッッ――!?」
 思わず思い切り半身を捻るようにしてバッと振り返れば、警戒心でこわばっていた雪男の瞳はぽかんと丸く見開かれることになった。
「あ、やっぱりここにおった」
「…え……しま、くん…?」
 気配に気づかなかったのも、相手が志摩ならさほど驚くことでもなかった。同じように気配を殺して近づかれたことは、既にもう何度もあったから。それより雪男の思考回路をぎしぎしと軋ませていたのは、志摩の格好だった。志摩も雪男と同様に、女子生徒の格好をしていた。リボン結びにされたスカーフ、半袖のYシャツ、短めのプリーツスカートから伸びる…というよりはみ出ている――トランクス。
 それを見るまでは、自分よりも遥かに志摩のほうが似合っているのではないかとなぜか暗い気持ちになっていた雪男だったが、スカートからはみ出したレモンイエローのトランクスと、ニーハイソックスを履いているにもかかわらずつま先が外を向いた男くさい立ち方の足を見てぷっと噴き出した。
「ッ…なんだ、志摩くんもか」
「ちょ…わろたな…まあええわ、こうしてたら見つかってまう。奥村くん、ちょおこっち来て」
「わっ…!?」
 己の格好の滑稽さは十分わかっているというように恨めしげに雪男をひと睨みすると、志摩は雪男の腕を掴んでトイレ個室のドアを開け、中に引っぱりこんだ。中はもちろん男二人が入るには狭くて、奥にある洋式の便器のほうに雪男の身体は押しやられた。後ろを振り返ればドアは志摩の背中が塞ぐようにして閉められて、鍵がかけられるガチッという音が聞こえた。
「何す…」
 志摩の胸元を飾っていたリボンタイが、しゅると微かな衣擦れの音を立ててほどかれていく。まだ掴まれたままの腕が志摩の身体に近づくようにぐいっと引かれて、ぐるっと身体が反転する。雪男の背にとん、と志摩の胸が当たる頃には、外したスカーフで雪男の両手首は後ろ手に戒められていた。
「――ッ!? ちょ、…志摩くん……」
 やられた、という思いとともにひくっとひきつる口で低く志摩の名前を呼べば、返事をするように雪男の身体がしっかりと抱き締められて、肩口に志摩の鼻先がうずめられる。
 節ばった手のひらが、すすとシャツの裾から潜りこんで脇腹を撫でた。
「っ…!」
「こんなん…我慢できるわけ、ないやないですか」
 雪男のそれとは違った、あまさを含んだ低音が、耳を犯した。
 

 
***

 
 
「でえええええ!?!? なんで!? なんで!? 何コレ!! わけわからん!!」
 志摩は、特に逃げていたわけではなかった。
 ただちょっと目を離した隙にどこかへ行ってしまった雪男を捜しに、ちょっと教室を離れただけだったのだ。
 突然足元がスースーして、その違和感に目を向ければ剥き出しのトランクスが見えた。
 自分だけなのか確かめようと急ぎ教室に戻れば、湧いた爆笑とともに女子生徒たちの歓声があがった。
「っすごい! 学園長!」
「ほんとに着せてくれたのね~!」
「…は?」
「さっきね、お願いしてきたのよ、学園長に」
「そうそう、女装給仕役が消えちゃったって泣きついたら、手伝ってくれるって」
「……ああ…そゆこと…」
 ギリギリなことをやってくれるものだと半目になった志摩だったが、すぐにぴんと頭に閃いたのは未だ不在の想いびとのことで。
(…ということは、奥村センセも…!?)
 自分の格好が注視される状況下にあることも気にならず、志摩はすぐに雪男を捜すべくスカートを翻したのだった。
 
 
 


 
***


 
 
 

「っあ、んん…ッ…ん、ンッ…!」
 指先が、剥き出しの内股にねっとりと絡みつく。胸板をさんざん弄くりまわされたせいで既にスカートの布地を押し上げていた下肢の上から、志摩の無骨な手のひらがその熱をぎゅっと絶妙な強さで握りこんだ。
「~~~ッッ!!」
 びくびくっと雪男の腰がのたうつ。
 擦りあげてくる布地の感触が雪男の脳裏に危機感をちらつかせて、腰を炙る快感をどうにか耐えようときつく目を瞑って身体をこわばらせた。
「ッ…んん、んっ…ふ…、」
 しかしそんな抵抗も儚く、手の内側を使ってやわやわと布越しにペニスを擦ってくる動きは簡単に腰の奥に灯った熱を沸騰させ、我慢しきれずあふれた先走りでじわりとスカートを濡らした。
「ッッ! ~~っ…!!」
(だめだ、だめだ)
(これは、僕の制服じゃないのに)
 自分の意思を無視して熱くなっていく身体にじわりと羞恥の涙が浮いたが、雪男を追い詰める手は止まることなく、むしろ性急に動きはじめた。
「――ッッひ、やっだ、う、上から、やめっ…あ、アッ…!」
「…何? 直接触ってほしいん? 奥村クン」
「ッ!! っひ、や、やだッッ…!!」
 上擦った声を張りあげる雪男の意思を汲んだのか、握りこんでいたスカートからふっと手が離れ、直接志摩の体温がぎゅっと雪男の熱を包みこんだ。そればかりか、人差し指がぐりぐりと蜜口をこじあけるように擦ってきて、腰に走った鋭い刺激とともにとぷっと先走りがあふれてしまう。
「ッッ~~!! ぅ、ひっ、や、やっめ…!!」
 びくびくと不器用に腰が引きつる。尿道に近い場所を刺激されたことで射精欲とは別の危機感が腰の奥からじわじわと押し寄せてきて、雪男は襲いくるそれに耐えるように横を向き、鼻先を背後の肩に擦りつけて懇願した。
「っや、あっあ、そっ…な、したら…ッッんん…!!」
 切羽詰まった声をあげる雪男などお構いなしに、意地の悪い指はあふれる透明の蜜を尿道に擦りこむように指の腹を押しつけてくる。そのたびに身体の芯をきゅうっと絞りあげるような焦燥が襲って、それが何なのかわかってしまったから、雪男の抵抗はよりなりふりかまわないものになった。
「っやだ、やだ、しまっ…しまく…触る、な…っも、やめ…っぅ、ひっ…!」
 ぶるぶるとかぶりを振れば、羞恥と困惑で目いっぱいに浮かんでいた涙と額に浮いた汗がぱらぱらと散った。
「…ここ触られるん、イヤ?」
 やっと差し伸べられた救いの声に縋りつくように、雪男はぐったりとした首をこくこくと頷かせた。まるでさっきまでの意地の悪さが嘘のように、簡単に雪男を苛んでいた手がそこから離れていく。
「ッん…は、…っん…っ…」
「…じゃあ、こっちはええんかなァ」
「…っ…? っひ…!!」
 左足の膝裏が掴まれて、ぐっと抱えあげられる。スカートはくしゃくしゃになって内股までたくし上げられ、勃ちあがった雪男のそれも下を向けばよく見える体勢にさせられた。さらに、志摩の声とともに、散々前を弄くって先走りでべとべとになった指が後ろにぐちゅっと押しこまれた。
「…きっついけど、熱くてやぁらかァ…」
「!! ~~ッうっさい…っあ、アぁ…ッ!」
 熱い吐息を漏らしながらそう囁かれて、きゅうっと指が咥えこまされたそこを意識してしまい、雪男の耳は後ろがわまで真っ赤に染まる。
「ッッあ! や、あっあ、まっ…ひ、んんッ…!!」
 過ぎる羞恥にひくりと泣きそうになる喉を宥める暇もないうちに指が奥へ奥へと進みはじめ、ときおり探るようにぐるりと中を抉られる。そのたびにぎゅっと臍の奥に力がこもって、触れられてもいない前が熱く硬くなった。
「…なんや、ひくひくしとる…ほんと好きやね、恥ずかしいの…なぁ、奥村クン?」
「~~ッッ!! このっ…アァ…ッ! っひ、ん、んンッ…!! っや、あ、アッ…!」
 今度は羞恥だけでなく怒りが混ざったせいでさらに視界が真っ赤に染まって、全力で腕から逃れようと腰を捩ろうとした雪男だったが、すぐに一旦引いた指が二本に増えて奥まで捻じこんできて、その上無慈悲に弱い箇所ばかりぐりぐりと抉ってくるものだから、そこから生まれる強すぎる刺激に耐えるので精一杯になってしまう。きゅうきゅうと中が収縮するのがわかって、それが志摩の囁いた言葉と重なって、カアッと肌を羞恥が焼いた。
「ッッ…や、あ…っく、んっン…っは、ぁ、アッ…!」
 すっかりいやらしく男の指を食むようになってしまった後孔から、中を満たしていたものがずるりと抜かれていく。掴まれていた膝裏がさらにぐぐっと抱え上げられて、下からぴとりと押しあてられた熱がずずっと体内に入りこんできた。
「ッッ~~!!! ぁ、あっ…っは、あぁ…っひ、やぁ…、…いっ…!」
 ずぶずぶと最奥まで貫かれても、不自由な腕のせいで身体を支えられなくて、志摩の硬さを深々と味わわされることになる。頭の芯まで串刺しにされたように熱に侵されて、視界がぶれる。少しでも身じろぎしただけでびりっと腰を走る強い刺激に恐れすら覚えて、深すぎる結合を非難するためにかぶりをふることもできなかった。
「ッッや、…くる、し…っは、あ、アッ…ぅう、ん、ンッ…!」
 なんとかこぼした非難めいた喘ぎは、志摩の耳に届いているのかいないのか。
 ゆっくり腰を回すように揺さぶられて、それだけで視界がぱちぱちと白く弾けた。
「っひ、あ、あ、あっ…!!」
「ッ…ほんっと…感じやすぅて、…かぁいらし、身体やな…ッ」
「ッッ…!! ――ッひ、そっそれ、そこっ、やっ…やめ、やめっ…~~ッ!!」
 体内を掻き回す熱だけで十分いっぱいいっぱいだったのに、足を抱え上げていたのとは反対の手が再び雪男の屹立に絡んだ。すぐに優しく先端が引っかかれて、一気に再発した危機感に悲鳴をあげてもそこを弄る指は止まってくれなくて。
「っひぅ、だめ、だめ、やだ、っうぅ…! やだ、あ、アッ…!!」
 腰に響く鋭い快感も構わずぶんぶん頭を横に振って、少しでもその手から逃れようと腰を捻れば、まるでそんな抵抗も許さないというようにぐっと奥を突かれる。余計に抑えていた危機感――尿意は強くなって、雪男は決壊しそうになるプライドを必死に支えていた。
「…ほら、出すんなら汚れてまうから、これ噛んどいたほうがええんやない?」
「っ…?」
 雪男の口元に寄せられたのは、捲りあげられたスカートの裾だった。
(そうだ、)
(よごしちゃ、だめだから)
(これ、かんで)
 霞みかけた理性でなんとか口を開け、その布をぎゅっと噛み締める。声を殺すこともできると少し安堵したが、それも束の間、また腰がゆさゆさと動きはじめて、尿道が爪の先でくじられて、事態が何も好転していないことを思い知らされる。
「ん゛ん゛、ん゛――ッ!!」
(やだ、だめ、むり、むり)
 暴れたら、より鋭い快感で追い詰められて。
 じっとしていても、前と後ろをじわじわと嬲る動きは止まらなくて。
(ただ出すだけじゃないから、こんなにやだって言ってるのに)
(ほんとに、だめなのに)
「っん゛ー、ん、んっ…!」
 じんじんと痺れる腰をなんとか回して、訴えるような目で志摩を振り返れば、濡れた眦に唇が押しあてられた。
 耳にとろりと囁かれたのは、悪魔のあまい低音で。
「……漏らしてまえや」
「!!!!」
 ――知られていた。
 それを気づかされた羞恥が全身を取り巻いて、終わりを促すようにひときわ強く先端の窪みをぐりぐりっと擦られて、追い討ちをかけるように中までがくがくと揺さぶられて、雪男がなんとか繋ぎとめていた砦は一気に壊された。
「ッッ――!!! っふ、ふ…ぅ、うぅ…ッ…う~…っ…!」
 決壊したあとでは止められない水音が、静かな個室に響く。便器に位置を定めるように、こんなときだけ優しく志摩の指が雪男のペニスを撫でながら誘導していて、雪男は本当に死にたくなった。
(こんな、こんな)
(まだ、後ろに入ってるのに)
(志摩くんが、見てるのに)
(消えたい)
「ッッ…ぅ、…う…ッ…」
 感情の糸が振り切れてしまったみたいに涙も嗚咽も止まらなくて、そのうち背後の男に身を預けているのが今更腹立たしくなってきて、でも腰は痺れて足に力が入る気配もなくて、このままなりふり構わずに床に座り込みたかったけれどここがトイレかと思うと雪男にはそれもできなくて、なんとか戒められた腕でドンッと背後の腹を突き飛ばすと足が萎える前にくるりと体勢を変え、洋式の便器にどかっと倒れこむように座った。すぐさま目の前の諸悪の根源をギッと睨みつけたが、視線の先の憎たらしい男は、自分の衣服を正しながら片方の口端をあげただけのいやらしい笑みで返した。
「…ほんま、エロすぎやろ……」
 近づいてきた男に思わずじりっと後退した雪男だったが、すぐに便器の蓋に背が当たってぐっと歯を噛み締める。覆いかぶさってきた志摩の手は体液で濡れた雪男の内股に伸びて、ぐっと足を開かせるように大きく撫でた。
「ッ…!」
「…ドロドロやね、」
 まだ余韻を多く残した肌は手のひらでざらりとなぞるだけでぴくんと跳ねたが、そこでやっと現実感がもどってきて雪男はサーッと青ざめた。
(そうだ、これ、フェレス卿の――!)
 そんな雪男にも構わず、志摩の手はぷちぷちと制服のボタンを外していく。
「…お、もう脱げるみたいやんな。…ん? でも俺のは脱げんのやけど……あ、奥村先生俺の服脱がしてみてくれへん?」
 やっと拘束されていた腕が自由になったかと思えば見当もつかないことを言われて、殴りつけるより前につい言うことを聞いてしまった。
「……はぁ? 何言って……あ、」
 どうやら他人が手伝えば脱げるようにできているらしい。とはいえ例え脱ぐことができても、志摩はともかく雪男が外に出られる状態のわけがなくて。
「じゃあ俺、しえみちゃんにでも着替え借りてきますわ。ちょお待っててな」
 未だ呆然としたままの雪男の頬にチュッと大仰に音を立てて、志摩はへらりと頬を緩めると個室を出ていった。
「…………」
 そこで雪男は腕が痺れていることにやっと気づいて、殴らなかったのは力が入らなかったからだと心の中で言い訳をすることにした。
 
「……志摩くん?」
 まるで詰問するように低い声で名前を呼んだ雪男の肩に、志摩は持ってきた着替えをふわりとかけた。
「しえみちゃんと言ったらお着物やろ~♡ 俺らのクラスに頼まれて、ちょっと大きめのサイズも持ってきてくれとってん」
「で、それは……?」
 志摩が手に持っていたのは、黒塗りの箱。訝しげに眉を寄せた雪男に、志摩は頬を引き締める筋肉がなくなってしまったみたいにゆるゆるになった笑みで返した。
「決まっとるやろ、お化粧道具や」
「…はァ?」
「こんな時間まで散々逃げ回ったんや、女装してないとおかしいやろ」
 嗜めるように喋りながらも志摩の手は淀みなく雪男の制服を脱がし、身体の汚れを拭い、着物をきちんと着付けていく。
「…なんでこんなことできるんだ」
 未だぶすくれたような声のまま、雪男がぽつりと呟く。
「小さい頃から女の子と遊んでおったら、これくらいできますわ。…ほら、口ちっさく開けて~」
「………」
 言われるままに少し開いた薄めの唇に、すっと濃い紅色が刷毛で引かれる。すぐにむっと閉じられてしまった唇を咎めようとした志摩だったが、不機嫌を隠そうともしない目にじっと睨まれて、その強い視線に釘付けになってしまった。
「………あかんわ奥村せんせ、それは」
「んッ……!?」
 カタン、と口紅用の刷毛が志摩の手から落ちるのと、空いた手が雪男の顎を掴んで紅い唇に噛みつくのはほぼ同時だった。
「んんっ…!! ん、ンッ…んん…は、んぅ…っ!」
 綺麗に引かれた艶のある紅は、唇に擦られて、啄まれて、舌にねっとりと舐めあげられて、唾液で滲んで。
 何度も舌が差し入れられて、絡んで、口端からあふれた唾液を掬って、またとろりと注がれて、雪男の肺からすっかり酸素が奪われるまで続いた。
「ッッ…ぷは、はぁっ…は、ハッ…はぁ…ッッ…」
 ぐったりと志摩の胸元を握りしめて必死に開いた口で酸素を取りこむ雪男の唇は、滲んで乱れた紅で汚されていて。
(あかん、)
(こんなエロいひと、外に出したら)
 着物の襟からのぞく白い首筋をそろりと指先で撫でれば小さくふるえる肌を目にして、志摩はぐっと雪男の肩を掴み急に真剣な目をして言った。
「俺、頑張ってくるから。奥村くんは出てこんでええからな!」
「……へ、」
 雪男と同じく紅く汚れた口を、にっと清々しいほどの笑みでいろどった志摩は、ぽかんと目を丸くする雪男を置いて今度こそ出ていってしまった。
 やっと置いていかれたと気づいたとき、雪男の胸を締めつけたのは理不尽な寂しさで。
「…………、バカ」
 小さく呟いた拗ねたような声は、やはり静かな個室のドアに吸いこまれるだけだった。









END.
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